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第20回えんため大賞受賞作家インタビュー
ライトノベル
ファミ通文庫部門
第20回エンターブレインえんため大賞
ライトノベル ファミ通文庫部門 優秀賞受賞
『侵略性外来種『勇者』』
著:殻半ひよこ / イラスト:夕薙
●プロフィール
小説を書いて本を読んで小説を書いて身を捩る。物語を救ったり物語に救われたりされたい。
今日も今日とて原稿に向かい、殻の半分ついたままなひよこの気分で空想妄想精進あるのみ。

小説を書こうと思ったきっかけはなんですか?

 思い返してみれば、文章を書くのが楽しい、と感じたことがきっかけであったように思います。
 自分の書いた文章を喜び、楽しんでもらった経験があり、それから幸運にも身が震えるような作品に何度も出逢い、気が付けば、文字を書くことにのめりこんでいました。

えんため大賞でデビューしたいと思われた理由を教えてください。
(ex.賞金が魅力的、出身作家が好きだったなど)

 身も蓋もない話で恐縮なのですが、応募については毎度毎度作品を書くとき、書きたいことを書こうとすると分量がどうしても長大になりがちで、新人賞に投稿する際のレギュレーションにあわず地獄の添削に悩むことが多かった自分にとって、39字詰め34行で85枚~165枚という《やりたいことをフルでやりきれる》《尺の都合で展開を不本意に削らなくてもよい》勝負の舞台を提供して頂けたことが、何よりも大きかったです。
 おかげさまで、あれもこれもそれも盛り込んで書き上げることができました!
 作者としても「結構無茶目な作風をやっているな……大丈夫かな……」と思っていたものを寛大に評価して頂き、誠にありがとうございました……!

今回の受賞作のアピールポイントはどこですか?
また、執筆・応募にあたって気をつけたことがあれば教えてください。

 各種様々なチート能力を持つ外来種勇者たちを、いかにして絶対不利なファンタジー住民が打ち破るのかの工程を注目していただければと思います。そして、主人公であるパットが何かと苦労しながらがんばったり、おいしいところはちゃんと与えられたりするところは作者本人もそれはそれは楽しんで書きましたので、同じく楽しんでもらえれば望外の喜びであります。あとは無論、個性的なヒロイン・各章ごとのサブヒロインたちなんかも是非、是非……!
 執筆や応募にあたって気を付けた点は、外来種勇者たちのキャラ性です。他の作品であれば主人公のポジションにもなれる存在でありながら、今回彼らには明確に《敵》のポジションを担ってもらうことになるので、やれること・やれないこと・やってはいけないことを区別するのに注意を払いました。

受賞が決まったとき、また授賞式に出席したときのお気持ちを教えてください。

 ずっとこういう時が来るのを目指し、望んでいたはずのことなのに、不思議なもので《それが実際に得られた瞬間》というのは心が落ち着いているもので、昂揚はむしろじんわりと訪れました。
 何より、受賞はまだ入り口でしかなく、これから実際の出版までにもいくつもの工程がある、真に喜ぶべきは実際に作品が読者に届いて面白かったと言ってもらえた時で、ここから更に気を引き締めなければならない……という感覚のほうが強かったように思います。

将来、どういう作家になりたいと思っていますか?

 コメディやシリアス、現代やファンタジー、バトルものに料理もの、色々な方向性の作品を書いたとしても《殻半ひよこの作品ならば面白いだろう》と期待と信頼を持って頂けるような、読者の心を掴み、満足させられる作家を目指したく思っております。

最後に、これから作家を目指す方へひと言アドバイスを!

 思い付いたことは、くだらないことでも、つまらないことでも、メモを取り、残してみてください。それは思考の鍛錬であると共に、いつか線になり円を結ぶかもしれない点を打つ布石です。また、ほんの些細な着想を、話にはならないと切り捨てず、膨らませる癖を持つのも悪くありません。
 作家にとって空想力こそが刃です。思い描いたネタは、放たれる瞬間を待つ弾丸です。それらはあなたの点が線や円になろうとする時、立ち塞がる障害を切り裂いて撃ち抜いてくれるでしょう。
 いつから始めたかも意識できなくなるくらいに繰り返し、自分でも底がわからなくなるくらいに積みあがった文字の山は、手が届かない、と思っていた場所に、いつのまにかあなたを誘っているかもしれません。
 僕も昔、小説家や、文章で食っていくことなんかできないんじゃないか、って思っていました。