TOP > 受賞作品 > 第13回 小説部門
歴代受賞作品
インフォメーション
応募総数
701作品
最終選考候補
6作品
選考委員
森 好正(エンターブレイン取締役)、河西恵子(ファミ通文庫編集長)、ファミ通文庫編集部
総評
「龍ヶ嬢七々々の埋蔵金」は久々の大賞に相応しいスケールの作品だと評価したい。いかようにでも広げられるであろう物語だ。魅力的なシリーズに成長することを期待する。そのほかの受賞作も、みな光るところのある作品だが、あいかわらずタイトルの付け方がうまくない。タイトルは作品の顔である。タイトルひとつで読後感も変化する。よくよく考えてみてもらいたい。
受賞作品
◆大賞
『龍ヶ嬢七々々の埋蔵金』
★作者:鳳乃一真(おおとりの かずま)
プロフィール:千葉在住。理系大学に進学するも卒業間際になって急に作家を目指し出す。地デジ化が完了していないアナログ族の数少ない生き残り。将来的には高田純次氏のようないい加減なオッサンになる事を目指す方向で。
★受賞者コメント
連絡を受け、改めて応募作を読み返し、思わず笑ってしまった。とりあえずこれを書いた四カ月前の自分に一言「ありがとう、キミには色々と笑わせてもらったよ」。最後にこれまでお世話になった方々にも一言「感謝」。
★作品内容
八真重護はとある家業に反発したため、太平洋の人工島にある高校に強制転校させられる。貧乏生活の手始めに入居したのは激安の訳アリ物件。案の定、部屋には少女の自縛霊が! 一〇年前何者かに殺されたこの自縛霊・龍ヶ嬢七々々は、今はプリンを食べながらネトゲ三昧。だが生前は天才的頭脳と行動力でこの島を建設した七人の人物「GREAT7」の中心人物だった。更に重護は「七々々コレクション」の存在を知る。それは彼女が世界中から集めた不思議な力を持つ宝物の数々で、島の各所に隠されているという。そしてその一つを重護が偶然手に入れたことから、「七々々コレクション」を狙う勢力が次々に彼の前に現れる! 自称名探偵少女、「冒険部」の腹黒部長、謎の怪盗団、さらには……。宝を狙う理由は十人十色、しかし今は重護にも理由がある――宝の力で七々々を殺した犯人を見つけ出す! 天才美少女自縛霊の「埋蔵金」をめぐる奇想天外冒険トレジャー・ロワイヤル!!
【選評】河西恵子
随所に散りばめられた伏線と謎、二転三転するドラマが「先を読みたい!」と思わせてくれる。主人公の"家業"、学生島の創設秘話、"七々々コレクション"など様々な不思議ネタを個性的なキャラクターが盛り上げている。
◆優秀賞
『明智少年のこじつけ』
★作者:道端さっと(みちばた さっと)
プロフィール:一九七九年生まれ。島根県出身、在住。高校卒業後、執筆を始める。投稿した作品が一次選考を抜けてから引き返せなくなり、そのまま書き続けていると奇跡的に突破してしまう。――嘘か誠か頬をつねる毎日。
★受賞者コメント
えんため大賞に送り続けて、早四年。二〇代だった身体も三〇代に突入し、あきらめムードのところでまさかの受賞。お話をいただいた夜、思わず泣いてしまったのは恥ずかしい思い出です。ありがとうございました。
★作品内容
俺、小林修司は今日も怒りに燃えていた。それというのもすべてアホの幼馴染み、明智京太郎のせいだ。爽やかなマスク、大仰な立ち振る舞い、推理小説が大好きなヤツの最近の流行――「小林くん、キミがこの事件の犯人だっ!」って俺を犯人扱いするのはもうやめろ! 京太郎にかかれば、ガラスを割ったのも教師の書類を盗んだのも理科準備室のガイコツが動いたのも全部俺の仕業になっちまう。しかも幼馴染みその二・文美は「名推理だわ!」とか言って煽るし、顧問の中村先生は「助けてぇ~」となぜか事件を知らせにくるし、ヤツの妹・二重にいたっては「お兄様をイジめないで!」ってもう意味がわらかん。なんで俺お前ら以外友達いないんだろ……。だけどある日、珍しく慌てた京太郎から二重ちゃんが失踪したことを知らされる。一体彼女に何が? しかもその中で俺は、二重ちゃんの秘密を知ってしまったんだ――。その場しのぎのひねくれハイテンションコメディ!
【選評】河西恵子
いわゆる部活物系ミステリー。毎度お馴染みネタを繰り返すパターンと、主人公をとりまくおかしな幼馴染み&妹、天然系の先生などのパロディネタの会話センスなどは手堅く面白いが、良くも悪くもこじんまりしている。
◆特別賞
『実録!江戸前寿司部 誕生秘話』
★作者:セゴロ
プロフィール:生まれも育ちも静岡県。ずっと創作の仕事につきたいと思いつつ、締め切りも伸びたしと応募してみたところで受賞。好きなのは痛いくらい辛い物を食べることと、目的もなくバイクを走らせること。
★受賞者コメント
まずは選考委員の皆様をはじめ、関係者の皆様に心より感謝いたします。感謝した上で敢えてお尋ねします。どなたかとお間違えじゃありませんよね? 今さら間違いだなんて言われたら、泣きますよ。
★作品内容
「今から名のるのは本名です。ネタでもないし、悪ふざけでもありません」俺は井園カツオ。この名前のせいで「いずれ世界一の寿司職人、すなわち世界一の江戸っ子になる女だ!」とべらんめぇ口調で豪語する先輩、江戸前素子に目をつけられた。執拗に『江戸前寿司部』に勧誘してくる素子。もちろん断わるつもりだったが、俺は副部長兼女神の越戸紫に出会い入部を決意した。一目惚れだったのだ。まずは学校公式の部となるため、部員集めに奔走。結果、同じ名前の悩みを抱える男の娘・伊倉圭、俺のトラウマ幼馴染み本山葵というメンバーも揃い、部室もゲットした俺たちに早速のピンチが訪れる。『地上げ部』の川田と舎弟・ヤスの壮絶な嫌がらせがはじまったのだ! 怒りに燃える俺たちをなだめ、素子は幼馴染みの川田との絆を"寿司"で取り戻したいと語った。思い出の「アメリカザリガニの握り」は川田の心を動かせるか!?  ――史上初の学園寿司コメディ、誕生!
【選評】河西恵子
バカバカしく笑える部活物。今では部活物は定番だがナマモノの「寿司部」というところが斬新。逆に「寿司部」という点を除いてしまうと突出したところがない。また、人物の名前や随所のパロディが好き嫌いを呼ぶ。
◆特別賞
『キュージュツカ!』
★作者:関根パン(せきねぱん)
プロフィール:一九八四年生まれ。さそり座。O型。一六七cm。右きき。遠視。そば派。三重県に住んでいたこともあるが、おもに埼玉県の東部で地味に育つ。高校時代は弓道部、の隣にあった送球部、の補欠。
★受賞者コメント
応募規定を守った甲斐もあり、受賞の運びとなりました。わーい。規定に反してないとはいえ「小説」と呼んで良いか自分でも疑わしかったんですが、「小説部門」の賞を頂けたので「小説」ってことでお願いします。
★作品内容
勇者たちが魔王クレアを封印してから五十年。この『ダミニチュア戦士養成学校』は、予言により百年経ったら復活するといわれる魔王を、再び封印するために創立された。そして今、この学校の『弓術科』に入学を果たした少女・ミカの冒険に満ちた学園生活がまさに幕を開け……。「弓矢使いなんて主役にはまずならねえ」え―――!? 「矢などなくても弓で目標を打ち破ることはできる!」アトラっ、弓をそんな風に使っちゃダメ! 「うなれ音速レゴラスよ!」ヌンキくん、クロスボウって……。ドカーン!! 「矢尻に似せた榴弾でしたっ!」パルちゃん!? 「やあっ!」ドゴォォン! だからそんな風に使っちゃダメだってば! 「いいじゃないか魔王さえ倒せば」……でも、魔王の復活って、わたしたち、もうおばあちゃんじゃない? 「いいじゃないか魔王さえ倒せば」――なんて具合の魔王不在の凪の日々を油断と隙だらけに贈る、ゆるゆる日常バラエティSSS【ショート・ショート・ショート】活劇!
【選評】河西恵子
見開きページ単位で四コマ風のオチが来る、細切れの章で構成されたチャレンジブルな作品。物語自体は繋がっているので、全体でゆる~いファンタジーになっている。ただし、それが薄っぺらく見えてしまう難点がある。