TOP > 受賞作品 > 第12回 ガールズノベルズ部門
歴代受賞作品
インフォメーション
応募総数
473作品
最終選考候補
6作品
選考委員
森好正(eb! 取締役)、佐藤康男(B’s-LOG編集部 編集長)
総評
最終選考に残った作品は多数あるものの、その実力には結構な開きがありました。優秀賞を取った作品とそのほかの作品の一番の違いは「きちんとドラマを書こうとしているか」。無論、主人公たちが魅力的であることは前提ですが、彼らが思想も信条も目標も異なる人間とぶつかり合うことで初めて魅力的なドラマは生まれます。魅力的な敵役の創造にも、もっと力を込めて貰いたいと思います。
佐藤
ガールズノベルズ部門が創設されて、四回目の選考会を行ったがアイディア・文章力・構成力のレベルが上がっていたことは非常によかった。しかし、大多数の作品はそれぞれの書き手の得意ないずれかに頼りすぎてしまっている印象が強い。自分の得意なテクニックに頼るだけでは小説家になるのは難しい。「何のために小説を書くのか?」「読者に何を伝えたいのか?」ということを小説家を志す方たちは今以上に考えてみてほしい。そこから生まれてくる思いこそが、作家として生きていくために、なによりも大事なことだから。
受賞作品
◆優秀賞
『海が愛したボニー・ブランシェ』
★作者:河合莉久 改め 緑川愛彩(みどりかわ・あい)
プロフィール:3月6日生まれのAB型、東京アナウンス学院コミュニケーション・インストラクター科(学校法人東放学園)卒。探検・冒険もののお話と旅番組が大好き。読んだ人に、恋をした気持ちになってもらえるお話を書くのが目標。
★受賞者コメント
身にあまる光栄な賞をいただき、すべての関係者の皆さまへ心から御礼を申し上げます。いまは、人生何がおきるかわからないという驚きと喜び、そして未知への不安、それらを一度に手にした思いで胸がいっぱいですが、努力してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
★作品内容
「ファド・ディアス……いますぐあたしをここからさらって!」
海神に心身を捧げた<ロランの乙女>の伝説が生きるガルトリア国の港町・コスタバ。両親を殺された直後、王命で無理やり修道院へ入れられていたボニーは、年に一度の祭りに沸き返る故郷の町に一日だけという約束で帰ってきた。造船技師だった父の遺作となる軍船・メレアグリナ号の進水式を見届けるために。……とみせかけて本当の目的は、窮屈な修道院を抜け出し、両親殺害の犯人とされる海賊ファド・ディアスを捜し出すこと。進水式のさなか、ボニーは狙い通りにファドを発見し接触するが、容疑はまったくの濡れ衣だと撥ねつけられてしまう。
ボニーを修道院へ連れ戻そうとする王立騎士団と、意外にも侠気に富んだファドら海賊の面々。反目する両者の間でボニーが選んだのは、「真犯人が見つかるまで、海賊に仲間入りすること」!? 恋はご法度の修道女、しかも宿命の血脈を受け継いだ少女の人生は今、未知なる冒険へと船出を果たす――!
【選評】森
主体性のあるヒロインに名脇役になりそうな予感のある老海賊、相応に主義主張のある敵役など、人物の設定・配置に目配りの行き届いた作品。まだまだ改稿の余地はあるがさまざまな種類の「人間」を描いてドラマを紡ぎ出そうとする姿勢には好感が持てる。
【選評】佐藤
非常によく描けている作品である。宿命の血脈を背負った主人公。主人公の周りを彩る海賊たちと王子たちの裏にある因縁なども上手く描いている。読後感も爽快感が残り、書き手の意図が明確に伝わってくる作品となっている。あらゆる面で今回のNO.1である。
◆奨励賞
『花嫁のヴァンパイア ―月光城の謎―』
★作者:岩田尚虎 改め 甲斐田紫乃(かいだ・しの)
プロフィール:魚座の東京生まれ。今まで各地を転々としてきたため、転校回数は通算5回。現在は生まれ故郷に在住。趣味はゲームと読書とホラー映画鑑賞。好きなものは猫とギャグ漫画と分析哲学とお酒。
★受賞者コメント
心から楽しんで書いた作品でこれほどの評価を頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。選考して下さった関係者の皆様方、これまで温かく見守ってくれた家族、そして恩師と友人に、深く感謝の意を表します。これからも精一杯頑張ります。
★作品内容
吸血鬼ハンターの祖父を持つ勝気な少女・アデルは、小さな村で静かに暮らしていた。ところがある日、家に黒羽の矢が刺さっていたことで状況は一変! なんとこの村、「魔の森」の月光城に住む吸血鬼ととんでもない「盟約」――100年に一度、若い娘を花嫁として差し出すこと――を交わしており、黒羽の矢はその花嫁=生贄に選ばれた印だというのだ。必死の抵抗も虚しく、月光城へ無理矢理連れてこられたアデルだったが、そこに現れたのは最近引っ越してきたばかりだというイケメンだけど超ヘタレの吸血鬼・アハロンとその従者・ダニエル。盟約のことなど知らないというアハロンたちに、アデルは不本意のまま「花嫁」としてここに来たことを告げると、なんとあっさり村へ帰ることに。アデルも胸をなでおろし、再び平凡な日常へ――めでたし、めでたし。の、はずだったのに、なぜか城から出られない!! アハロンたちは「帰る方法を一緒に探そう」と申し出てくれるのだが――!?
【選評】森
非常に読みやすい作品。文章力では十分に受賞レベルにある。主人公たちの造形も魅力的である。ただし彼らを狙う存在の設定があまりに弱い。また、ひとつの城の中だけで物語を展開するのであれば、その城自体の設定にももう少し気を利かせたいところ。
【選評】佐藤
文章力・キャラクターの見せ方ともに上手に描けている。ただ、新人作家にありがちな世界観・キャラクター設定がお留守になってしまい、長編としては、弱くなってしまっている。これからどんどん書いていくことと、色々なジャンルの作品を吸収して自分の作品を生み出す力を更につけていってほしい。