TOP > 受賞作品 > 第11回 ガールズノベルズ部門
歴代受賞作品
インフォメーション
応募総数
210作品
最終選考候補
5作品
選考委員
森好正(eb! 常務取締役)、佐藤康男(B’s-LOG編集部 編集長)
総評
ビーズログ文庫はまだ若いレーベルです。それだけに、従来の女性向けレーベルの枠を飛び越えた作品を出せるチャンスが多々あります。回を追ってバラエティに富んだ作品が集まるようになってきましたが、我々としてはもっともっと多彩な作品と共に歩んでいきたいと思っています。次回には今回以上に突き抜けた応募作を期待します。
佐藤
ガールズノベルズ部門を創設して、三回目の選考となったが、毎年質は良化している。その中から今回は王道少女小説、ファンジー溢れる作品、エンターテインメント性の高い物語と多様な受賞作が生まれたことは非常に嬉しいことである。
受賞作品
◆佳作
『小弓姫(しょうきゅうき)』
★作者:カリコ 改め 文月更(ふみづき・さら)
プロフィール:7月21日生まれ、横浜育ち。中1でパソコンを与えられ、体が半分パソコンに埋まったかのような生活を送る。その一方で6年間空手部に所属し黒帯を獲得。資格がそれしかないので運転免許が欲しい今日この頃。
★受賞者コメント
人生の転機となった本があります。自分もそんな誰かの心に響く物語が書けるよう、努力を重ねていきたいです。機会を下さった関係者の方々、放任主義を貫いてくれた両親、応援してくれた友人に心から感謝します。
★作品内容
「──まるで小さな弓の姫のようだ」。一時期、世を騒がせていた国賊・黒竜党で弓矢を自由自在に操り、党の守護神として異名を馳せていた驪珠(りしゅ)の二つ名……それが“小弓姫”だ。洲一つに匹敵するほどの力を持つ黒竜党に、党の跡取り・飛龍の婚約者として赤子の頃攫われ育てられた驪珠は、党なき今、母の実家である名門趙家で過去の記憶を失った深窓の姫君として過ごしている。そんな驪珠には気がかりなことが……。黒竜党首領の首を討ち取り、驪珠を黒竜党から連れ出した、自分の過去を知る昊天(こうてん)という少年のことだ。ある時、驪珠を溺愛する従兄・枢イクから、昊天が枢イクの親友である蒼天(そうてん)の子飼いの刺客であるということと、さらに唯一驪珠=小弓姫と知る祖父から、飛龍が生きていることも知らされる。いてもたってもいられなくなった驪珠は無理やり外出するのだが、そこで黒竜党の残党と遭遇してしまった。それを助けたのは、蒼天の妹である男装の少女、朱明。2人の出会いから、様々な過去を巡る物語が始まる──。
【選評】森
文章、構成、キャラクターいずれをとってもレベルが高い。勢い・パワーのある筆力で合格点である。だが、その一方で表現・内容に一本調子の"若描き"なところが目立ったのが惜しい。物書きとしての"幅"を広げるのが次の課題でしょう。
【選評】佐藤
全体の構成、ストーリー、主人公がよく描けている点、読み手に何を伝えたいか、明確な点は高評価である。ただし、周りの登場人物の葛藤がもっと見せられると、作品の質がもっとよくなると思う。
◆奨励賞
『ヤンキー巫女西征伝』
★作者:夕鷺かのう(ゆうさぎ・かのう)
プロフィール:鳥取生まれ兵庫育ち、この二つについて語りだすと止まらなくなる故郷大好きっ子。基本的に好奇心旺盛なので、なにか面白そうなことがあるたび、どこだろうとすぐ現場直行!してしまう癖がある。とくに、民俗・考古学系のイベントに目がない。「頭のつくりが一世代前だね」とよく言われる。
★受賞者コメント
色々なものを盛大に踏み外している作品だと自覚があっただけに、受賞のご連絡を頂いたときは本当に驚きました。選考に関わられた皆様に、この場を借りて厚く御礼申し上げます。また、憧れのレーベルの一員として、たくさんの方々に楽しんで頂ける作品を書けるよう、いっそう気を引き締めてまいります。
★作品内容
パツキンピアス、腕のタトゥーは蛇に蔓薔薇。ペタンコ学生カバンには「喧嘩買います」の赤テープ。あたし=穂倉梓は、元は筋金入りのヤンキーだったのだが、今は遥かド田舎の村で巫女をやってる。そう、巫女。今日も心穏やかに境内の掃除に祝詞の暗誦、神事のイロハは丁寧に……なんてやってられるかウゼエ! そんな所にやってきたのは、顔ばっか恐ろしく綺麗なクラスメイトの染井良信だ。いきなり「僕の父親を探してください!」とか土下座したうえ「自分は神様です。ハーフですが」なんていう意味不明のカミングアウトつきってマジ電波!? しかも「協力しないと、あなたは不幸のどん底人生に逆戻り」だと!? 脅迫まがいの依頼のお蔭で、あたしの日常はすっかり面白いことになっちまう。退屈なのも気にいらねぇが、面倒に巻き込まれるのは御免なんだよ! ――村の伝統神事に秘められた“闇”と“秘密”。はぐれ巫女&チェリーな神様コンビが立ち向かう、予想以上の強敵とは?
【選評】森
最初から最後まで飽きさせず、読ませてくれた。大変におもしろい。ただ少女小説としては少々枠をはみ出した設定で、評価が割れたのも事実だが、むしろその「ジャンルにとらわれない」感覚を遠慮なく目一杯伸ばしてもらいたい。
【選評】佐藤
文句なしに面白い。これに尽きる。キャラクターの勢いで押し切った感もあるが、エンタテインメント性に優れている。少女小説の枠組みをはみ出している感もあり、この評価をせざる得なかったのが残念。
◆奨励賞
『東の剣士 北の魔女』
★作者:くりたかのこ
プロフィール:関西育ち、岡山在住。お笑い、カンフー映画好き。面白いものに対してのあこがれが心をはみだして小説を書きはじめることに。ロールプレイングゲームにハマっている最中は会話や食事を忘れる困った大人です。
★受賞者コメント
受賞のお知らせをいただき、今でも信じられない気持ちです。すべての関係者の方々に深く感謝と御礼をしつつ、より良いものが書けるよういっそうの精進をしてまいります。
★作品内容
隣国セインレインとの争いに、ようやくの休戦を迎えようとしていたレゴリア国。傭兵としてやってきた東国の剣士・センリは、古城がたたずむ山中で束の間の休息にまどろんでいた。すると突然、目の前の湖に人が落ちてくる。急いで救出に走ったセンリだったが、助けてみればそれはまだ幼さを残した少女だった。彼女の名前はテア。何やら訳ありらしいが、センリ自身にも深くは語れない事情があった。そんな二人の前に、暗殺者集団が現れる! 災厄をもたらすレゴリア国最後の魔女を探しているというアサシンに、テアは叫ぶ。「あたしのダーリンとお腹の子だけは助けてください!!」……テアの狂言とおかしなペースに巻き込まれて危機を脱し、互いに事情があることを薄々感じながらも、近くの村まで同行することになった二人。ところが村は盗賊の脅威にさらされており、夫婦のフリを続けざるをえなくなったが、そこには様々な思惑が絡み合っていて――?
【選評】森
キャラクター設定のうまさ、そしてその描き方が印象に残った。このジャンルの作家として書き続けるには必須のスキルなので、より磨きをかけてもらいたい。もちろん、文章・文体の研鑽も忘れないように。
【選評】佐藤
構成力・キャラクターの配置などは見るべき点があった。楽しませる作品に仕上がっている。反面、文章の稚拙さが目立つ部分もあり、ここは勉強していけば良質な作品を書けると思う。