TOP > 受賞作品 > 第10回 ガールズノベルズ部門
歴代受賞作品
インフォメーション
応募総数
445作品
最終選考候補
6作品 ガールズノベルズ部門の最終候補はビーズログ文庫新人賞の入賞者がノミネートされます。
選考委員
青柳昌行(eb常務取締役)、森好正(ebコンテンツGP)、佐藤康男(B’s-LOG編集部編集長
総評
青柳
前回に比べて、総じてレベルは上がっていると思う。とはいえ、全体的に設定、シチュエーションありきで物語を作っているようにみえた。それも大事なのだが、それに終始していてはストーリーに広がりがない。次回以降はもっと面白い作品が応募されることを期待している。
全体として、詰め込みすぎを感じた。ネタ、設定をどう見せるかをもう少し考えてほしいと感じた。前回の総評でも書いたが、一番重要視したいのは作品に「人間を描くという気持ち」が見えるかということ。それがしっかり見えてくる作品の出現に期待している。
佐藤
ビーズログ文庫が創刊されて2年目になり、ビーズログ文庫を意識している応募作品も増えてきてることはうれしいことである。ただ、面白い小説とはなんだということを考えてもらいたい。
受賞作品
◆佳作
月の姫巫女が予言する』
★作者:真朱那奈(まそお・なな)
プロフィール:真夏の夜半生まれ。慶應義塾大学卒業後金融機関に勤務。極めて現実的な社会人の振りをして、実態は占いマニアのファンタジー好き。寸暇を惜しんで空想に浸る癖有り。受賞作も通勤途中に携帯端末で綴ったものです。
★受賞者コメント
お気に入りのモチーフを好き放題に詰め込んだ物語が評価された幸運に感謝するとともに、関係者の皆様に心より御礼申し上げます。今後はお気に入りを提供する側になれればと思います。何卒よろしくお願い申し上げます。
★作品内容
満月の夜に受けた天啓を、次の新月の夜に予言として王家に伝える月の姫巫女。大国ルンゲートの未来を占い、同時に次期皇后の座を約束されたこの役目を、パルティアが担って一年がたつ。豊かに流れる銀赤の髪に好奇心旺盛な紅玉の瞳、聖女に似合わぬ破天荒な性格の当代姫巫女は、フィアンセである皇太子・ハルバートをハラハラさせっぱなしの毎日。
月のもたらす予言には、吉いものもわるいものもある。パルティアは、新月までの間は姫巫女以外誰の耳にも入らない不吉な予言を放っておけず、それが現実となる前にスケールを小さくしてさっさと実行してしまう。ちょっとした危険くらいなら顧みずに、予言の裏をかいては危機回避に励むパルティアの行動力が、ハルバートの頭痛の種なのだ。
そんな折、また新たな天啓の夜が巡ってきた。そこで下された予言は、王家の断絶すら予感させる、この上なく不吉なもので――!? パルティアは、愛する人と国を守ることが出来るのか? 「予言」をめぐるファンタジーロマン。
【選評】青柳
文章力、構成力は買えるが、物語として話が動いてこないという印象を受けた。もっと整理できたのではないだろうか? そこがもったいなかった。
【選評】森
今回の最終選考に残った作品の中では非常に評価が高い。世界観、登場人物などよくまとまっており、面白かった。伏線の回収を含む物語の組み立てがきちんとされていることもよかった
【選評】佐藤
主人公パルティアの成長譚はきっちりと描けていて作品としてまとまっているのは高評価。ただ、もうひとつ華がないのが残念。そのため、小さくまとまりすぎてしまった感がある。
◆佳作
『夜は花を惑わす』
★作者:百瀬千尋(ももせ・ちひろ)
プロフィール:憲法記念日に生誕。東京都出身在住、四代目江戸っ子。フィギュアスケートやサッカーなど、スポーツ観戦を好む雑読家。フクロウとテントウムシの小物をなんとなく蒐集しているが、犬猫妖怪恐竜にも目がない。
★受賞者コメント
このたびは過分な賞を頂き光栄です。締め切り当日に意地で書き上げるのを、温かく支えてくれた家族と友人と恩人に深く感謝します。今後はレーベルの一員として、精魂をこめた作品と共に、思う存分がんばる所存です。
★作品内容
東領聖撰軍の旅団に所属する軍属舞師シュマリアは未だ恋知らずの元気な少女。義兄ラゼリオンと組む舞は、恋語りはいまいちだが剣舞は見事な演技で人々を魅了している。ある日シュマリアらは帝国の各封領から派遣された旅団が競う闘舞に参加するため帝都アムサールへ向かうことに。その旅の途中、帝国と因縁を持つバルク家ティムール族による強襲に遭遇してしまう。指揮を執る威圧感溢れる男は、ラゼリオンに謎の表情を残し去っていった。
そして帝都に到着したシュマリアは、印象深い瞳を持つ美貌の宮廷楽師・シフルという青年と出会う。単なる楽師とは思えない謎多き青年に、シュマリアの一番近くにいるラゼリオンは警戒心を隠さない。その後も度々彼と遭遇するシュマリアは、知らず知らずのうちに帝国を揺るがす陰謀に巻き込まれていき──!?
【選評】青柳
全体として話が動いてこなかったのがもったいない。描きたいテーマはわかりやすく、恋愛描写のところが非常によく描けている。そこは評価できる。
【選評】森
物語としてよくまとめている。キャラクターの描き方と構成が上手に描けていることが評価できた。ただ、構成を見直すことによってもっと面白くできたはずだ。
【選評】佐藤
世界観は非常によく描けている、キャラクターもその中で動いているのが評価できる。ちゃんとひとつひとつ描いていることに好感をもった。
◆佳作
『紅蓮の翼 ~暁を招く神鳥~』
★作者:小柴叶(こしば・かなう
プロフィール:1987年生まれ、千葉県在住。両親と祖父母+三匹の愛猫と共に、周囲を山と田んぼに囲まれたのどかな町で暮らしている。趣味は書店巡りと音楽鑑賞。無類の本好きで、増える蔵書をどこに収納するかが目下の悩み。
★受賞者コメント
受賞のご連絡を頂いた時、あまりの驚きに頭の中が真っ白になりました。創作の苦しみを味わいながら書き上げた作品だったので、ここまで高く評価して頂けたことに感激しております。これから精一杯頑張りたいと思います。
★作品内容
神の統べる天界と、魔王の統べる地界の間、封印の大地と呼ばれる世界に住む人間たち。地界へと通じる大地の歪みから生じ、人間を襲っては喰う異形の魔族たちから人間を守るために神が創ったのが、紅蓮の翼を持つ新たな種族、「神鳥」である。
天界に生まれ育つ神鳥は、時が満ち、紅蓮の色をした御印が額に現れると、「神降ろし」という儀式をもって人間界に遣わされる。御印は魔族と戦う力の象徴であり、天から降ろされた神鳥は、人間たちを守ることに身命を賭すのだ。
西の大国、セレシャイアに神降ろしされた年若き神鳥の娘・カナイは、突然動き出した自らの運命に戸惑い、魔族と戦うことを激しく拒む。そんなカナイに対して冷徹に振舞う先代の男性神鳥・イナミや、さらに先代のセレナ、また、天界におわす初代神鳥に選ばれた三人の守護者たち――厳しく心強い仲間に支えられ、弱虫でわがままな新米神鳥は自らの使命を受け入れることができるのか? 魅惑のキャラクターに彩られたミスティックファンタジー!
【選評】青柳
構成はうまくできており、アクションシーンはよく描けている。ただ、全体のストーリーの流れにダイナミック感がないのが惜しい。現代に世界を固定したほうがよかったのでは。
【選評】森
設定とキャラクター配置だけで終わってしまっているのではないか? そこでとまってしまっているのが非常にもったいない。練り込みつつ、プロットの見直しをするとよくなるのではないだろうか。
【選評】佐藤
描きたいテーマがみえてきたことは評価できる。キャラクターに感情移入ができた点もよかった。難点をいえば、もっと情景描写と心理描写の整理ができればよりよい作品になったと思われる。
◆佳作
『フェル・ルトラウスの珠』
★作者:夏目瑛子(なつめ・えいこ)
プロフィール:赤福で有名な伊勢の街に生まれ、雪と草原に憧れ岩手へ。人工知能を専攻しつつ、ひそかに超能力者に弟子入りしていた大学時代。楽器製作専門学校を今春卒業し、ハープ製作者となる。最近の趣味は古楽器、物理学、聖書。
★受賞者コメント
この度は本当に有り難うございました。最初に父に報告したら「出版詐欺じゃないか」といわれてテンションが下がった私ですが、たくさんの方に読んで頂き、ご指導いただいてよりよい文章が書けるように努めたいです。
★作品内容
失われた伝家の武器を求めて祖国を発ち、幼馴染のリーナスとダリュスの兄弟とともに旅する侯爵家の子息・セレム。路銀を稼ぐため、猿に似た異形の化け物・ケダヌールを退治した際、彼は不思議な珠を手に入れる。それは幼い頃目撃した、竜を呼び出す見知らぬ少年が持っていたものと似ているように思えた。旅先のトルベール領で、彼らは少々手強い依頼を受ける。七年ごとに領主の娘を生贄に求める巨大水蛇の退治を請け負ったのは、化け物の毒に感染し、次第に獣化していくダリュスを救うためだったのだが、本来生贄になるはずだった娘の身代わりとして、セレムは魔法で女性化させられてしまった。花嫁の姿となり、宮殿の廃墟に棲む化け物と対峙した時、彼はこの旅で得たすべての出会いが偶然でなく、運命に操られた帰結であったことを知る。それを知った彼は……? 幼児期の記憶、失われた家宝、魔法と秘薬――竜の珠を巡り、すべての謎がひとつになる、時翔けるラブファンタジー!
【選評】青柳
海外ファンタジーのような前半とドタバタ劇の後半のアンバランス感にはまってしまった。キャラクターも活き活きと描かれており、最終選考に残った作品の中では高い評価をしている。
【選評】森
ネタの詰め込みすぎを感じる。伏線の張り方、ネタの盛り込み方をもっと勉強してほしい。とくに構成力を上げてほしい。ラストに関しては疑問を感じる。
【選評】佐藤
キャラクターはよく考えて作られている。ありがちな設定ではあるが、面白く読ませてくれた。これから多く書いていけばもっと面白い作品を書ける可能性を感じさせてくれた。
◆奨励賞
『東風(こち)を運ぶ飛魚(ひりゅう)』
★作者:菊地悠美(きくち・ゆみ)
プロフィール:1月1日茨城県納豆の都で生まれる。神奈川県在住。小学校の授業で物語を書き、褒められて調子に乗る。紆余曲折のち真剣に小説を書き始め、両手両足では足りないほど新人賞に投稿し現在に至る。
★受賞者コメント
挑戦中のえんため大賞にガールズ部門が出来たと知り、喜び勇んで投稿したのが奇跡の始まりでした。十数年も抱えてきた夢「小説家になること」、この先も続けられるよう精進します。奇跡を与えてくれた全てに感謝です。
★作品内容
幼馴染であり悪友同士のゼンとグランツが設立した【ゼングランツ協会】はここフィルリス王国で妖魔退治(という名のなんでも屋)を生業としている。……が、最近は“ゼングランツ協会に頼むとロクなことにならない”と、悪評が立ってシャレにならないほど仕事が激減中。ある日、大貧困のゼングランツ協会を訪れた、ひとりの軍人。渡された書簡にはフィルリス国のトップである総裁閣下の署名……。中には『飛魚(ひりゅう)を探してほしい』という依頼と破格の成功報酬額が。「飛魚」(ひりゅう)とは空を飛ぶ魚で、春を運ぶと噂されている貴重な生き物。その姿がいまだ見られない今冬は奇妙な伝染病が蔓延しはじめていた。軍人嫌いのゼン、守銭奴のグランツは互いに喧々諤々しつつも、一路「飛魚探しの旅」へ。前途洋洋、計画通り飛魚を捕獲して報酬ガッポリ! のはずが、のっけから正体不明の妖艶な美女にゆく手を阻まれて──!!
退魔しまくり不揃いな3人衆(+1匹?)のロード・ストーリー!!
【選評】青柳
キャラクター配置はできているのだが作りこみが甘く、感情移入しづらいのが難点。妖魔が必要だったかは疑問に思えた。全体の構成を見直すともっとよくなるのではないだろうか。
【選評】森
コメディを描こうとしていることは評価できるが、それを描ききれていない点については厳しい評価をせざる得ない。構成力を上げて、読者にちゃんと見せてほしい。
【選評】佐藤
キャラクターを通して、読者に楽しいものを読ませようという作者の意図がみえることは評価できる。
◆奨励賞
『大好き! 悪魔は世界の救世主』
★作者:神矢陽(かみや・よう)
プロフィール:大阪生まれの滋賀育ち、現在は京都在住。途中で芝居やバンドに浮気もしましたが、物を書くことだけは小学生の頃からずっと飽きずに続けてきました。趣味は散歩と映画と人間観察。9月21日生まれの乙女座A型です。
★受賞者コメント
まさにこれは身に余る光栄っ! 余った分は形を変えて必ずお返しいたしますゆえ、関係者各位様そしてまだ見ぬ読者様、どうか待っていて下さい。ひとまずは選んで下さった方々に恥をかかせぬよう精進してまいります。
★作品内容
乙女の一大イベント『告白』。天秤高校2年の彩川奏(あでかわかなで)は片思いの彼・杉峰逸(すぎみねいつ)に思いを告げようとしていた。そして──。
『私とつきあってください!!』『第5の門より選ばれし杉峰逸。我と契約を』
世界最高のタイミングであるはずの告白にかぶった低い男の声。見れば全身黒ずくめ、マントに包まれた中世風の格好、腰まである漆黒の髪。そして、静謐な赤い瞳。どこからみても謎の黒男。どうやらそいつは“悪魔”──!? 悪魔曰く、「あと2回杉峰逸が私の契約依頼を断れば、世界は滅びる」と素で恐ろしいことを言い出してきた。……何事も好奇心旺盛すぎる奏が選んだ結論は「杉峰君が救世主ってカッコイイ。てかヤバイ!!」──と、ノリノリで悪魔・セフィロトに協力することになったが、その道のりはイバラだらけ次から次へと困難続出。乙女心は天国OR地獄?? 告白からはじまる学園ファンタジー・コメディー!!
【選評】青柳
オープニングの掴みはよかった。セリフや展開はありきたりだが悪くなく読ませる。ただ、無駄な部分が多いように見える。設定が面白いだけにそこが残念である。
【選評】森
文章力、キャラクターともに及第点だが、物語としての完成度が低いようにみえる。また、『女性読者』がターゲットであることをもっと強く意識して欲しい。
【選評】佐藤
キャラクターをうまく転がして、ストーリーを見せようとしていることは評価できた。読ませるテンポもなかなかよいのだが、もうひとつ。何を読者に見せたいのかを勉強してほしい。